「自虐史観」という言葉はもはや野蛮なパッションを誘導するだけの有害な言葉になっている。世界の戦後体制において第二次世界大戦の戦勝国史観を受け入れることは、「歴史の事実」云々はともかく、国際社会に入れてもらえるエントランスチケットになっている。対外的にそれを受け入れる態度をとることと、自国内で自虐的でない自国の歴史観を育んでいくことと分けて考えるという振る舞いができないと大変なことになる。アメリカからの本当の独立をいつしか成し遂げるためには、真剣に考えるならば実際的には当然、戦勝国史観を受け入れ続けたままそれを果たすのが成功率が高い。戦勝国史観を受け入れ、アメリカを逆撫でせず、中、韓とも自力でそこそこ上手くやっていける状況の上にしか日本が真に自立した国にシフトしていく道はないだろう。「歴史の真実」にこだわり、「我々はそんなには悪くなかった」ということで人気取りして選挙で勝とうとするのは本当に危ない衆愚政治である。自国内で大事にしていく歴史と、国際社会で作法として受け入れるべき戦勝国史観とを区別すべきというリテラシー能力くらい国家として今の日本は持てるはずであると信じたい。「自虐史観」、「自虐史観」と怒ってばかりいて、国際社会においても反戦勝国史観を貫けというのは「自滅史観」である。