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>>221
続きです。
兌換貨幣は金本位制などの、モノ・資源との交換券としてのお金です。つまりこの制度下でのお金は「限りある資源」だったわけですね。
お金が限りある資源である以上、「政府も含めて」その資源の全体的な取り分を決める必要がありました。
その取り分が税金だったわけですね。

ところが、この兌換貨幣には問題がありました。経済が成長すると、その大きくなった経済規模で円滑にモノのやり取りを行うだけの貨幣も必要になります。
にも関わらず、資源としての貨幣には、その量の限界があるわけです。限界を超えてしまうと、経済は正常に回らなくなるんですね。
不換貨幣となるとその前提を無くせます。不換貨幣はゼロから作るお金ですから、資源としての前提が無くなるのです。

となると、これは税金の存在意義にも影響します。
政府の資金を税収に頼る必要がなくなるわけです。政府は自身の懐事情を考える必要はなくなり(恒常的に赤字を出して良くなり)、純粋に世の中の景気や貧富の差などを理由に施策をすれば良くなります。景気が加熱しすぎるようなら税金を多く取ればいい、貧富の差を是正したければ、貧乏な人から取る税金を少なくしてバランスを取るようにすれば良い、と言うわけです。

以上の事から、不換貨幣下でも残る税の意義とは、概ね以下のようになるでしょう。
・景気の調整弁
・格差の是正
・特定の政策への誘導(タバコ税など)
今回は下の一つについては割愛しますね。
さて、消費税をこの観点から見た場合、どう評価出来るでしょうか?

まず景気の調整弁としてですが、コレは低いと言っていいでしょう。
税における景気の調整機能とは、不景気ほど「全体の平均税率が下がる」機能と言えます。
例えば所得税は累進課税ですから、不景気になると全体的に収入が下がり、税率も下がります。
法人税なら赤字企業からは取りませんから、不景気ではこれまた全体の税率が下がります。
今の消費税にはそう言った要素がほぼありません。
財務省なんかはコレを「安定財源」なんて言ってますが、調整弁は安定しちゃダメなんですよ。

そして格差の是正、こちらはどうでしょうか。
一見、金持ちほどお金を使うから是正されるような気がしますが、コレには落とし穴があります。
それは、「貧困家庭ほど貯蓄に回せる余裕がない」という点です。
コレを貯蓄性向が低く、消費性向が高い、と言いますね。
そして消費性向が高いということは、相対的に見て税率が高くなる、という事です。
分かりやすく言うと、貯蓄を全くできない家庭は収入の10%が消費税で持っていかれることになるのに対し、収入の半分を貯蓄する家庭なら収入の5%しか持っていかれない、と言うわけです。
また、企業に関しても赤字企業ほどキツくなります。
なんせ売り上げ、正確には粗利から税を取られるわけですから、法人税と違い赤字企業でも容赦なく取られるわけです。
この容赦のなさが安定財源の本質なのですよ。

さて、小林先生はコロナ論1にて、「経済を止めると人が死ぬ」と仰いました。僕もその通りだと思います。
そして、景気の調整弁が乏しい消費税は、経済が止まりかけているときも構わず経済を止めに掛かる、という制度です。
つまり人を死なせてしまう制度ということになります。

また、皇室の件でこうも言っておられました。「陛下は弱者に寄り添っておられる」と。
経済を止めた時に真っ先に死ぬのはその弱者でしょう。であるのなら、弱者ほど負担が大きく、また経済を止めることでより死にやすくなってしまう消費税は、陛下の御心に反する制度、と言うことになってしまわないでしょうか?

経済の語源は「経世済民」です。
これは弱きものを守り、世の中を安定的に運営する、と言う意味が込められていると思います。
この思想は陛下の思想とも一致するのではないでしょうか。

日時
2022-07-11 13:34
投稿者
the_k
記事
「ロシアと戦前の日本が同じだと?」小林よしのりライジング Vol.440
No.
222