宮台氏の意見を読んでいて感じるのは、氏の考える理念の主体が、基本的に戦勝国側にあるという事です。建前上は戦勝国のレジームを引き受ける、というのは文字通り「本音と建前」という程の事ではないでしょうか。
敗戦国は戦勝国のレジームを「当たり前」のものとして引き受けるべきだ、という考えは、言わば「軍国主義の肯定」です。しかし僕は、そもそも国家のアイデンティティーは、戦争の勝敗などとは無関係に存在し得ると思っています。敗戦した時は、受け入れざるを得ない現実もあるでしょうが、ゆずれない所までゆずるのは「保守」と言えるのかどうか。むしろ、摩擦は覚悟してでも我を通す方が、自然といえば自然です。危険を回避しながらも我を通す「話術」を持っているのが、真に優れた政治家なのかも知れません。
「歴史を捏造」して相手国と「信頼を醸成」する、というのは、「私は嘘を言っていますが信頼してください」と言うのと同義ではないでしょうか。質問された高校生の方は、シンプルに議論の本質を突いているように思いました。