我々はふだん主権者という意識が非常に薄いんですね。消費者か被雇用者という意識で生活している。だから、国家に対しては、サービスが悪いとクレームを言うか、はいはいどうせ文句を言ってもしょうがないんでしょ、従いますよ、という矛盾した変なメンタルしか持てない。学生さんはもっと顕著でしょうが、現場、つまり自分が世の中を構成し、世の中の一部であると実感できる場所、それを持ちません。当事者性というのは、世の中に文句を言っているけど、そんな自分だってその世の中の一部じゃないか、と気づくところから始まります。サービスの受け手、果実の受け手は世の中とか国家に自分が命を懸けるべき価値を見いだせないと言いますが、じゃああなたはあなた以外の人間が生きててよかったと言えるくらいの世の中を作れる自信がありますか。またそのために具体的に何かをしたことがございますか。これから何かを出来るだけの準備がございますか。
徴兵制というのは、というよりそれに限らず誰かのためにあえて割を食うというのは、
自分以外の他の人間が生きててよかったと幸福を噛みしめるためにするんです。自分が、じゃありません。別に嫌なら割を食うこと全部から逃げてもいいですが、その分ほかの誰かが割を食うんです。そういう気持ちは自分にも多いにありますが、ほんとに逃げたら一生みそっかすで終わるんです。寂しいですよ、それは。
卑怯者の島、是非読んで下さい。死に場所を失った主人公はこう叫びます。「俺は英霊になれなかった!」と。