みるみるさんが紹介してくれた http://president.jp/articles/-/11634
で飯島勲氏は原子力開発を加速させることこそが核廃棄物の問題を解決できると主張しています。
その内容は、使用済み核燃料は再処理することによって放射能の低減期間を10万年から8000年に短縮でき、高速増殖炉で焼却することにより300年にまで短縮が可能である、というものです。
飯島氏は「使用済み核燃料は再処理で有害物質を減らしてから埋めるのである」と述べていますが再処理とは使用済み核燃料を切り刻み硝酸で溶かして有用なウランやプルトニウムを抽出精製するものです。
このような化学反応によって放射能が低減することはありません。
核種ごとに分別することで処理が効率化されることが期待されるだけです。
放射能を低減するためには別に適切な原子炉や加速器を開発して焼却する必要がありますが実用化のメドは立っていません。
現状は再処理によって発生する極めて放射能の高い廃液を溶けたガラスに混ぜて固めてガラス固化体として保管しているだけです。
これで有害物質が減っているといえるのでしょうか。
日本はいまだに再処理工場を本格稼働できない後進国で再処理の多くをイギリスやフランスに依頼しています。イギリスやフランスから送り返されてくるガラス固化体の放射能の低減期間は10万年です。
日本で再処理をすれば低減期間を8000年に短縮できるというのは
『なぜ日本は世界に先駆けて高速増殖炉を開発し核廃棄物を焼却できるのか』といった技術分野における誇大妄想にすぎません。
飯島氏が核廃棄物の処理に使えるとしている高速増殖炉ですが
元々は使用済み核燃料を再び核燃料に転換できる夢の原子炉として計画され
アメリカ、イギリス、フランス、ロシアが1950年代前後から開発を始めましたが技術的な困難さから撤退が相次ぎました。
周回遅れで日本、ドイツ、イタリア、が1970年代に参入しましたが、こちらも日本以外は撤退しています。
(この組み合わせはちょっと面白いですね)
いまだに、しつこく高速増殖炉の開発を続けているのは
日本、中国、インド、フランス、韓国ですが
ほとんど計画のみで、まともに動いている高速増殖炉はほとんどありません
実用化の見通しも2040年頃で高速増殖炉の開発が始まってから100年近くになりますので実現は不可能と見てよいでしょう。
高速増殖炉は高速中性子を使うために冷却材として中性子を減速させにくいナトリウムを使うのですがナトリウムは水に触れると激しく反応するため非常に危険です。
「もんじゅ」ではナトリウム漏れから火災を起こしています。
このように危険すぎて実用化が不可能な原子炉で核廃棄物を処理するなんて発想は空想科学の世界ですが、この炉で天然ウランや劣化ウラン(ウラン238)を燃焼させると高速中性子を吸収して核燃料として利用可能なプルトニウム239に転換することができます。
これを応用すれば使用済み燃料に含まれる長寿命の放射性物質の一部をを寿命の短い放射性物質に変換することが可能であると飯島氏は主張しているわけです。
それ以前の問題として再処理すらおぼつかない日本の技術で長寿命の放射性物質をきちんと分離できるのでしょうか?
適当に核廃棄物を高速増殖炉に放り込めば消滅処理ができるというようなものではありません。身の丈にあった方法を考えたほうがいいと思います。
これらが技術的に難しいことを飯島氏は知っているからなのか放射能の低減期間を300年に短縮できるなら必要性の少ない最終処分場に話を移します
飯島氏は使用済み燃料やガラス固化体の冷却に時間がかかることや、使用済み核燃料中間貯蔵施設や高レベル放射能廃棄物貯蔵管理施設で長期間貯蔵できることを指摘して最終処分場が必要になるまでには時間的余裕があると述べています。
時間的余裕があるからといって行き場のないのない核のゴミを増やしてもいいという飯島氏の理論は理解不能ですが、これ以上核のゴミを出さなければ当面の保管場所は確保できているということは言えるでしょう。
これらの保管場所には安全性の問題があるのでいつまでも置いておくわけにはいきませんが時間を稼ぐことはできます。
せっかく稼いだ時間は核のゴミを増やすこのに使うよりは安全な処理方法の開発に使うべきでしょう。
原発利権を維持するために、すでに破綻している高速増殖炉を持ち出し
まだ余裕があるから核のゴミを増やせと主張する姿を見ていると
どうせ頭を使うのならもう少しマシなことに使えばいいのにと思います。