うさぎです。
ニコニコ動画の第107回ゴー宣道場の動画を見ました。
今、ちょっと、私は困惑しています。私がどこか考え違い、決定的な勘違いをしているのでしょうか。先に、私はこの皇位継承の議論では、こちら側と、男系固執派のあいだでは、「男系」「女系」という概念に関して致命的なずれがあり、さらに「双系」という概念は男系固執派の頭の中には存在せず、これらのことが男系固執派との議論・対話を(男系固執派を説得することを)大きく妨げる要因になっている、と指摘しました。またそのことを解決するための「論考」を提示しました(サトルさん、ねこみみさん、コメントありがとうございました)。
いえ、私が、勘違いしているのなら、ぜんぜん問題ないんです。しかし…
以下、ニコニコ動画を見ながら、おかしいと思った点を記します。
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動画の感想 ニコニコ動画で1時間50分くらいのところの議論。
高森先生が「継体天皇は当時、王族(皇族)とみなされていたこと自体は史実」と言われたのに対し、宇野さんが「それは文化としてそのように考える文化があったということで、今の人間が本当に科学的に継体が応神の子孫であるなんて信じているとしたら馬鹿だ」みたいなことを言われた。
そしたら高森先生が「そうなんだけれど、制度論としては、現在も継体は応神の子孫ということになっている…」という風にいって、ちょっとお茶を濁したような言い方になった。
ここは宇野さんのほうが明快だった。高森先生が自ら言われる通り、継体が応神の子孫だと言うのは、当時そういう信仰(文化、フィクション)が人々の間にあったというだけの話だ。そして現在も、そういうフィクションを、フィクションとして大事にしていこうという合意がある、ということ。
126代続く皇統というのは、あくまでもフィクション、言葉を足せば「神聖な」フィクションである、という視点は、しっかりと保持しなければならない。そしてフィクションである以上は、宇野さんが言うように、時代の変化とともに変わっていく、変えていくのが可能だし、自然という話になっていくだろう。
さて問題は、そのあとの、欽明が手白香皇女の血を引く女系の天皇であるとする高森先生の発言だ。
これはおかしい。うーん。
まず継体が王族であることを認めるのなら、依然として欽明は「男系」の天皇とみなしうる。
さらに、女系というのは(少なくとも政府や男系固執派の考えでは)女性だけのラインを遡って、母の母の母の…という風にさかのぼっていくラインのことであり、そのやりかたでいくと、手白香皇女の母親の春日大娘皇女の、さらにその母親の春日和珥童女君は、記録によると采女であって皇族ではない。つまり、非皇族の春日和珥童女君にまでさかのぼった時点で、そこから先をいくら遡っても、皇祖の神武にはたどりつかないということ。
もちろん、高森先生がおっしゃりたいのは、欽明と手白香のあいだのラインは、子供ー母親のラインだから「女系(より正確には母系)」であり、その意味で、欽明は父方の方のライン(男系)と同時に、母方の方のライン(女系あるいは母系)でも、皇祖につながっている、ということなのだろう。
しかし、これはやはり、「女系」という概念をあくまでも「母の母の母の…」という遡りのラインであると定義する政府や男系固執派からは、「何を言っているのだ」と一蹴されるのは、ほぼ間違いない。
手白香が皇統の権威を強く持っていた、ということは確かだとしても、依然として継体が応神の血を「男系で」引くという事実が健在であるかぎり、男系固執を黙らせることは不可能だと思う。
うーん、やはり、ダメじゃないのかなぁ。男系、女系、双系の定義の仕方が、こちら側と相手側では異なることを明確にしない限り、「欽明、天智、元正は女系天皇だった」という言い方は、一蹴されてしまう。これらの天皇たちが、男系固執派の定義において「男系の人間」であるということは(彼らの定義の枠組みの中にとどまるかぎり)一ミリも動かない。
繰り返すと、政府や男系固執派の定義では、皇統というものは、完全に男系(父の父の父の…のラインで皇祖にぶつかる)であるか、完全に女系(母の母の母の…のラインで皇祖にぶつかる)のどちらかでしかなく、その混合形式(たとえば、母の父の父の父の…、とか、母の母の父の母の)というものは存在しない。相手方は、白か黒かの二者択一であり、中間がないということ。
だから、私たちは、そのような混合形式のものを「双系」と呼ぶのだと、きちんと定義して、「双系」という概念の重要性を相手に提示しないと、たぶんずっとこのまま平行線が続く。男系固執派の決まり文句「あいつらは、男系と女系という言葉が何を意味するかを全く理解できない○○なやつら」を、抑え込むことができない…。
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以上が、動画を見た私の感想です。
うーん、私の懸念は、まちがっているのでしょうか、あるいは、どこかピントがずれているのでしょうか?
もし、コメントをくださる方がいらしゃいましたら、よろしくお願いします。またその際は、お手数ですが、ツイッターにアップした私の「論考:《女性天皇・双系継承》の必要性が理解できない人のために」( https://twitter.com/DrU08033945/status/1568884166468734977 )をふまえて、ご批判をいただけると非常にありがたく思います。
困惑のウサギでした