「効率化」という言葉に一つの固定観念があると見られますが、「利潤拡大、経済成長のために効率化させた就労状況を作る」のと「共同体を強化、発展、もしくは維持させていくために効率化させた就労状況を作る」のとでは「効率化」の内容も違ってくるという意味なのです。いかなる作業でも良質な製品、事業を生産、維持させるには利潤拡大、経済成長そのものが目的であるならば物理的、経済的に不可能なのであって、この目的に向かって効率化させればさせるほど製品、事業内容の劣化は自ずと発生することとなります。
一方で良質な製品、事業を生産、維持をするには人手が古今東西必須になってきますので共同体の強化、維持、発展も必須なのであって、そのために労務状況を効率化させるのであれば共同体の維持、発展、政策の妨げとなる業務や事業は淘汰、あるいは変更されていくという効率化が図られるので効率化させるその目標によって「効率化」の意味も違ってくるというわけです。
たとえば、漆職人も昔は弟子は師匠の技を盗むことが目的とされ、師匠の作業を見よう見まねで十数年かけて技を身に着けてきましたが、近年は師匠が直接弟子を指導して弟子の期間を短縮させて昔に比べて早々と独立させています。これは漆職人の数を増やすという点で効率化が上がっていますが、それでけではなく、師弟関係という信頼や共同体がより早く、より強固な形で出来上がり、より良質な漆器を作り、維持していくという共同体、文化の維持、発展を目的とした効率化でもあるというわけです。これは料理の作り方を一般人に公開して教えてくれる料理人や集落のあり方を公開し、招待してくれる集落の方々が共同体をより広めて発展させていくという目的とも共通しています。
「効率化」は目的によってその意味合いが大きく異なってくるのです。