今回のゴー宣は、今まで遺骨収集について漠然と感じていた疑問を、理論的に解いてくれたのですごく腑に落ちました。
さて「大東亜論」ですが、やはり連載で断続的に読むよりもずっと、物語性が感じられて良かったです。
「戦争論」でも感じた事ですが、自分が及びもつかないくらい「公」について真剣に考え、行動した人達がいた事に驚かされます。はじめは単純に、大臣を爆殺した後で自刃するなんて自分にできるだろうか、と思いました。しかし読んだ後で、来島は命を賭けたから凄いのではなく、命を賭けるまでに公について考えた事が凄いのだ、と思い至りました。
来島や、当時の烈士達の凄さは、自分の生命をまるで武器弾薬のように、戦略的に活用できた精神力にあると思います。それは、自分の生命以上の価値がこの国にはある、と信じていなければ、できなかった事でしょう。
もうひとつ印象的だったのは、血気盛んな若者たちに、今は待てと諭す頭山の冷静さでした。これは戦時中、あるいは今の日本にも言える事だと思います。感情が正しくとも、戦略を見誤れば目的は達成できない。頭山は、「君子は危うきに近寄らず」の人だったのかな、とも感じました。
今度は、どのように展開するのでしょうか。「大東亜論」が素晴らしいシリーズとして完結する事を願っています。
なお、編集サイドからエロティックな表現についての要望があったとの事ですが、僭越ながら個人的には、現状のレベルが限界ではないかと思います。物語の主旨はタイトルのとおり「大東亜」にあると思うので、少なくともひとつの要素が、主旨に影響を及ぼさないレベルで良いのではないでしょうか。単純に、そうしたシーンが多いと読みづらい、という人もいるかも知れません。